講座003 陰陽五行思想を考える

第1回 陰陽思想とは何か


私たちは、しばしば西洋的な価値観と対照的な物の見方や考え方を「東洋的」であると形容する場合があります。


通常、「西洋的」という言葉には論理的整合性を重んじる、あるいは分析的に物事を見て判断するといった意味合いが付与されており、現実的な態度で物事と接する場合に使用されることが多いと思います。そこから対比的に使用される「東洋的」という言葉には必然的に、非論理的で曖昧な性質を持つものといった響きがあり、現実から遊離した神秘的な雰囲気を感じさせるような物事に対して使用される傾向があるのではないでしょうか。


しかし、伝統的な東洋の物の見方や考え方も非常に優れた現実認識の方法であり、その固有の価値観に基づいた高い精神性や思想が魅力的な文化を形作る原動力となってきた事実を忘れてはなりません。


そこで、この講座では、東洋の人々がどのように現実を認識し、現象を体系付けて理解してきたかを、東洋の代表的な思想である陰陽五行思想について学習していくことで探っていきたいと思います。


陰陽五行思想は、陰陽思想と五行思想というもともとは別個の思想であった二つの思想が組み合わされてできあがったものです。五行思想については次回の講座で触れていくことにして、今回は陰陽思想がどのようなものなのかということについて確認しておきましょう。


陰陽思想は、古代中国神話に登場する最古の王といわれる伏羲(紀元前3350~紀元前3040年)によって作られたといわれています。その内容は、簡単にいうと、全てのものは陰と陽から成り立っていて、それらが消長を繰り返すことが新たな発展の原動力になるという考え方です。


たとえば、私たちは、何らかの出来事に遭遇した際、その出来事に対して良い悪いなどの価値判断を行いながら生きています。それは重要なことであるに違いないのですが、年月を経れば、その出来事に対する良い悪いといった価値判断が、その出来事が自分にとって必要な経験だったという認識に変わる場合も少なくありません。


陰陽思想もまた、あえて陰と陽という相反するものを事象の中に読み込むことで、対立を越えた認識へと至ることを目指す、そういった方法論であるということができるのではないかと思います。


第二回へ続く

※ この講座「陰陽五行思想を考える」は全3回のシリーズで行います。第2回は、来年1月にアップロードの予定です。

※ この講座の受講証書は、全3回が終了した後に発行を受けることができます。