講座003  ホタルについて

次の動画は、上谷のホタルではないのですけれども・・・

 上谷で見られるのはゲンジボタルで、5月末から6月頃に成虫になり、日が沈んで1時間ほどたってから発光をはじめます。よく光って元気よく飛びまわる時間帯は、午後9時頃と午前2時頃です。

成虫になると草のつゆをのむだけで何も食べません。ですから、成虫の寿命は長くても23週間ぐらいといわれています。おすは、めすをさがして約2秒に一回の間隔で光りながら飛びまわります。めすはおすに知らせるために光りますが、飛びまわったりせずに、樹木の葉などの上でじっとしています。

めすは適当な川岸のこけを見つけるとその上に0.5mmほどの大きさの卵を500個から1000個うみつけます。卵は、約1ヵ月後にかえり、1.5mmほどの 幼虫がうまれます。うまれた幼虫はすぐに水の中に入ります。昼間の幼虫は石の下や砂の中にかくれてじっとしていますが、夜になるとはい出してきて川の中を歩きまわり、カワニナなどの巻貝のなかまを食べて約9ヵ月間生活します。56回脱皮して、十分に成長した幼虫は、水の中からはい上 がって、水辺の柔らかい土の中にもぐり込んでサナギになります。それから4550日間、土の中ですごしたホタルは、 もう一度脱皮して成虫となります。しばらくして体が十分に硬くなると、雨が降ったりして土が柔らかくなった夜に、土の中からはい出して飛びはじめます。

ホタルが繁殖する条件について考えてみます。

まず、えさについて。1匹の幼虫がどのくらいカワニナを食べるか調べた所、サナギになるまでに約25匹のカワニナを食べることがわかっています。幼虫が成長していく段階に応じて、殻の長さが3ミリから35ミリまで大小のカワニナがいてホタルの幼虫はサナギになれるのです。ですから、かりにその場で50匹のホタルを飛ばしたいとすると、50×25=1250匹のカワニナが必要ということになります。

さらに、ホタルが毎年飛び続けるためには、母集団はこの5倍から10倍いなければ翌年につながりません。つまり、6250匹から12500匹のカワニナが必要なのです。加えて、このカワニナたちは水質、流速、陽当たり、底質、植物プランクトン(巻貝の食べ物)の存在によって生活できるわけですが、同じ場所に天敵の魚やザリガニがどのくらいいるかによって母集団の数はさらに多くならないと、ホタルのための必要数が確保されないということになります。

河川にすむカワニナ類は、自然河川では、水深1mよりも浅い岸辺に多くいるようです。農薬や合成洗剤などの毒性のある水が流れ込んでいないこと、水温が30を超えないこと、溶存酸素量が多いこと、流速が早過ぎない(2m/秒以下)こと、増水したときに隠れ場所があること、というような条件がそろえば、付着藻類や落葉などのえさがある限り、生き残ることができるようです。

次に、ホタルが繁殖するための地質や地形などの環境です。

岸の土は上陸した幼虫が登ってもぐりやすい湿り気を保っていること、羽化した成虫が止まっていられる林がまわりに必要です。そして、飛びまわる空間にクモなどが多いと成虫が食べられるし、人工照明が強いと、明かりを嫌うホタルはその場を避けて飛び去ってしまいます。

 こうした環境を長年維持するのは容易ではありません。ところが、初夏になるとホタルを見たい人が来るので「ホタル祭り」のイベントを開き、1匹でも多くのホタルを見せたい主催者が環境やホタルの生息条件を無視して照明をつけ、そこで発生していないホタルを乱舞させて観光資源にしている例があります。さらに環境とは無関係に水槽などで幼虫を養殖し、これを成虫にすることが保護活動と報じられることもあります。このような活動は根本的な環境問題を無視した行為であることを認識し、あくまで発生する現地の生態系の保護を目指すことが大事で、ホタルは「環境の結晶」という意識をしっかりもった活動が行われていかなければなりません。

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